骨粗しょう症

骨粗しょう症の定義

骨粗しょう症の定義は「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」です。骨強度は骨密度と骨質の2つの要因からなり、その比は7:3とされています。わかりやすく言えば、骨量が減少して骨折しやすくなった状態を言います。症状としては骨折、急性または慢性腰背痛があります。特に女性に多い病気であり、女性は閉経後に骨粗しょう症になりやすいことが分かっています。したがって、女性ホルモン(エストロゲン)が関係していると言われていますが、なぜ骨量が減少するのか真の理由は完全に解明されていません。最近では、骨量を正確に測定できるようになり、高齢化社会の到来とともに骨粗しょう症の関心は急速に高まってきました。

骨粗しょう症の特徴

骨粗しょう症そのものは怖くありませんが、骨量が成人平均より3割以上減少すると、ちょっとした外力で骨折しやすくなります。転倒したり尻もちをついたりして、大腿骨頚部や脊椎の骨折を起こします。これがもとで寝たきりになることもあります。最近の医学では、老人は骨折してから治療するのではなく、骨折しないような状態を維持しなくてはなりません。転倒しないように常日頃から注意しなければいけません。また、転倒しても骨折しにくいような骨量にしておくことが大切で骨折予防が大変重要です。骨粗しょう症の予防で一番大切なことは骨量を測定することです。近年、種々の骨量測定機が開発されましたが、手・腕・かかと・腰・大腿骨頸部などが測定できます。骨粗鬆症学会、骨代謝学会では腰椎骨量の測定が基本です。手やかかとの骨の検診で骨量が少ないと言われても、そのような検査はスクリーニングであり、おおまかな目安にしかなりません。

骨粗しょう症の治療

したがって、腰椎や大腿骨頸部の骨量を測定して正確な情報を得る必要があります。骨粗しょう症の治療法は年々進歩してきています。年齢・性別・骨量などにより、一番適切な治療法を選択する必要があります。治療中は4ヶ月に一度、定期的に骨量を測定することによって、その治療効果を判定します。日本では9種類の骨粗しょう症治療薬があります(表1)。最近では骨芽細胞を活性化する注射薬:テリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボン)が発売され、骨密度を増加させ、骨折の発生抑制が可能になりました。また、抗RANKL抗体が破骨細胞に作用する薬「プラリア皮下注60mg」が発売され、これは6ヶ月に1回の注射薬となっています。年に2回の注射で骨粗しょう症の治療ができることは魅力的です。

骨粗しょう症治療薬の推奨グレード一覧表

分類 薬品名 骨密度 椎体骨折 非椎体骨折 大腿骨近位部骨折
カルシウム薬 L-アスパラギン酸カルシウム C C C C
リン酸水素カルシウム C C C C
女性ホルモン薬 エストリオール C C C C
結合型エストロゲン※1 A A A A
エストラジオール A C C C
活性ビタミンD薬 アルファカルシドール B B B C
カルシトリオール B B B C
エルデカルシトール A A B C
ビタミンK2薬 メナテトレノン B B B C
ビホスホネート薬 エチドロン酸 A B C C
アレンドロン酸 A A A A
リセドロン酸 A A A A
ミノドロン酸 A A C C
SERM ラロキシフェン A A B C
バセドキシフェン A A B C
カルシトニン薬※2 エルカトニン B B C C
サケサルシトニン B B C C
甲状腺ホルモン薬 テリパラチド(遺伝子組換え) A A A C
その他 イプリフラボン C C C C
ナンドロロン C C C C

※1:骨粗しょう症は保険適用外
※2:疼痛に関して鎮痛作用を有し、疼痛を改善する(グレードA)。
【推奨グレード】A:行うよう強く勧められる。B:行うよう勧められる。C:行うよう勧められるだけの根拠がない。
(骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2011年版より引用。)

全身用測定機(Discovery)による腰椎骨量測定

骨粗しょう症による骨折が徐々に少なくなる時代が到来するよう我々は日々努力しなければなりません。当院では、全身用骨密度測定機(Discovery Ci,米国・HOLOGIC社製)により腰椎骨量を測定することができます。骨量測定に必要な時間は僅か30秒間で、服を脱ぐ必要もなく、痛みもありません。

全身用測定機(Discovery)による腰椎骨量測定
全身用測定機(Discovery)による腰椎骨量測定

米国ホロジック(Hologic)社製(測定時間30秒)

原発性骨粗しょう症の薬物治療開始基準

原発性骨粗しょう症の薬物治療開始基準

※1 女性では閉経以降、男性では50歳以降に軽微な外力で生じた、大腿骨近位部骨折または椎体骨折をさす。
※2 女性では閉経以降、男性では50歳以降に軽微な外力で生じた、前腕骨遠位端骨折、上腕骨近位部骨折、骨盤骨折、下腿骨折または肋骨骨折をさす。
※3 測定部位によってはTスコアの併記が検討されている。
※4 75歳未満で適用する。また、50歳代を中心とする世代においては、より低いカットオフ値を用いた場合でも、現行の診断基準に基づいて薬物治療が推奨される集団を部分的にしかカバーしないなどの限界も明らかになっている。
※5 この薬物治療開始基準は原発性骨粗しょう症に関するものであるため、FRAXRの項目のうち糖質コルチコイド、関節リウマチ、続発性骨粗しょう症にあてはまる者には適用されない。すなわち、これらの項目がすべて「なし」である症例に限って適用される。
骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン 2011年版;ライフサイエンス出版:55